こんにちは。
相変わらず目の下・ミッドフェイスのマニアックな手術ばっかりやってます(笑)
目の下の注入異物って、どんな部位に入っていることが多いの?摘出手術は、どんな具合にやっているの?
今回はこのあたりを私の個人的な経験から、注入部位別に検証していきたいと思います。
注意: 術中画像を多く含みます。 苦手な方はスクロールせず、ページから離脱してください。
摘出手術でシコリが良くでてくる部位を、
自分なりに、おおまかに7か所に分類してみました。
イラストの素材は、Wong C-H, Mendelson B. Midcheek Lift Using Facial Soft-Tissue Spaces of the Midcheek. Plastic and Reconstructive Surgery. 2015;136(6):1155-65. より引用させていただきました。
では1か所ずつ、検証していきたいと思います。
基本的に全て睫毛下切開で行います。
できるだけ顔に傷を残さず、正常な解剖を損なわないように元に戻せるアプローチで行っています。
すごく簡単に表現すると、ミルフィーユの薄皮を1枚ずつはがしていくイメージです。そして薄皮を丁寧にまた戻します。
時間も手間もかかりますが、コツコツ丁寧にやっています。
まずは
①皮膚と眼輪筋の間です。
一番皮膚の浅い場所で、ボコ付きが目立ちます。
実際に手でシコリを良く触れます。
施術直後から違和感を感じる場所です。
あまりに不自然な浅い部位の巨大なシコリに対して担当医に相談したら、「自分で毎日押してみるといいよ」と言われたという患者さんがいましたが、こんな場所の注入物は動くわけが無い。
最初から入れ方がおかしい。
皮膚に穴を開けないよう、慎重に剥がしていきます。
切開線から遠い場合は、眼輪筋の下から入って、裏側から最短距離で筋線維を割って入るときもあります。
皮膚をひろく剥がしすぎてしまうと血流が不安定で壊死したりダウンタイムが伸びたりするリスクがあるからです。
この辺りの判断はケース・バイ・ケースになろうかと思います。
こちらは開けてびっくり、皮膚の下がいきなり脂肪!?
(ここは本来、”皮下脂肪が無い場所”なのです。特に鼻側は。皮膚の真下は眼輪筋です。)
丁寧に端から剥離していくと、ちゃんと眼輪筋ありました。良かったです。
なんと皮膚の直下全体が注入脂肪でした。
これでは目の下がパンパンにふくれあがるわけです。
次に、
②瞼板前のスペースになります。
瞼板というのは目のキワの線維性の硬い結合組織で、軟骨みたいにコリコリしています。
ここは涙袋を作るための注入部位になります。
強い被膜を作りやすい場所なのか?ヒアルロン酸でもしっかりしたカプセル化していることが多いです。
涙袋ヒアルは5年10年たっても消えないって方が実際にいらっしゃいますが、関連あるかもしれませんね。
でもちゃんとしたヒアルロニダーゼ打てば効くことが多いです。
アクアミドやアクアフィリングなどの永久フィラーを使用した場合は、外科的に摘出するしか方法はありません(画像は涙袋アクアミドの摘出症例)。
ここ、皮膚が人体で一番薄くペラペラなので異物と一体化してるように見えます。
ほとんどの病院で、”皮膚と塊なので一緒に取るしかない”と判断されるようですが、写真のように何とか異物だけ取って皮膚は温存しています。
③Preseptal space
Bagci B. A New Technique for the Correction of Tear Trough Deformity via Filler Injections. Plast Reconstr Surg Glob Open. 2018;6(8):e1901. より画像引用
眼輪筋と眼窩隔膜のあいだ、隔膜前のポケット状の大きなスペースになります。
一番大きく、貯まりやすいという印象があります。おそらく注入物のポケット内移動も起こりやすいのでしょう。
実際にポケットの底のスペースに貯まっていることが多いです。
大きな注入脂肪を認めます。
④Prezygomatic space
Duan J, Cong L-Y, Luo C-E, Luo S-K. Clarifying the Anatomy of the Zygomatic Cutaneous Ligament: Its Application in Midface Rejuvenation. Plastic & Reconstructive Surgery. 2022;149(2):198e-208e. より画像引用
頬骨前面の三角形のスペースです。(アルファベットBCのあたり)
さきほどの③Preseptal spaceと同様に大きなスペースになりますので
比較的貯まりやすく、また移動も起こりやすい場所です。
ちなみに”移動”に関しては区画を超えて起こることはありません。
だから靭帯や脂肪区画などを良く考えて注入デザインを計画する必要があります。
またここの特徴としてはSOOF(眼輪筋下脂肪)が豊富な場所ですので、
注入物とこの脂肪が一体化していることが多く、なかなか大変なときがあります。
この部位への過注入は、iatrogenic malar mound(医原性の頬膨隆)を呈することがあり、入れすぎ注意です。
Surek CC, Beut J, Stephens R, Jelks G, Lamb J. Pertinent anatomy and analysis for midface volumizing procedures. Plast Reconstr Surg. 2015;135(5):818e-29e.より画像引用
⑤Tear trough周辺
Wong CH, Hsieh MK, Mendelson B. The tear trough ligament: anatomical basis for the tear trough deformity. Plast Reconstr Surg. 2012;129(6):1392-402. より画像引用
鼻の脇の溝の部分です。
2枚の眼輪筋起始部に硬い靭帯(tear trough ligament)が挟まれて、その奥には太い眼角静脈があります。
ここは本来、皮下脂肪も眼輪筋下脂肪も存在しない場所です。
こんなエリアに注入したってなかなか綺麗な形はできないし、とてもリスクが高いです。
ヒアルなのに、いつまでもこの辺にシコリが残ってる人いますよね?
薄く硬い筋膜間にトラップされて分解されにくい状態なんじゃないかと思ってます。
一番厄介な場所。取るの大変なんですよ・・・😣
⑥Premaxillary space
Wong CH, Mendelson B. Midcheek Lift Using Facial Soft-Tissue Spaces of the Midcheek. Plast Reconstr Surg. 2015;136(6):1155-65. より画像引用
小鼻のわき辺りのスペースです。
解剖学的には、”上唇挙筋”の表面側になります。
ここにフィラー注入する事自体が少ないのと、実際に気にされている患者さんも少ないです。
あまり問題になる部位ではないかもしれません。
上唇挙筋の裏側にはDeep pyriform spaceがあります。
ほうれい線への注入で鼻翼基部に打つ時の場所になります。
こちらは通常口腔粘膜からアプローチしますので今回とはまた別のテーマでまとめたいと思います。
⑦眼窩脂肪内
眼窩脂肪内のアクアミドの症例です。
針で注入する以上、こういうことは起こり得るのですね。
一部の眼科さんでは眼球陥凹の治療で眼窩脂肪内に注入する例があるそうですが(それはそれで高度な技術が要りそうですね、僕はやめておきます)。
美容外科でしわたるみの改善で行うことはまず無いですよね。
入っていたらただの事故だと思います。
ということで・・・
まとめるとこんな感じでしょうか。
①皮膚と眼輪筋の間 → 皮膚直下はシコリなりやすい。
②Pretarsal space → 被膜になりやすい?
③Preseptal space → 上手にやれば・・でもズレや移動あり。大量に貯まりやすい
④Prezygomatic space → 同上。SOOFと一体化。
⑤Tear trough 周辺 → 動かないシコリ&血管穿破リスク。
⑥Premaxillary space → あまり問題にならない?
⑦眼窩脂肪内 → 普通は狙って打つことは無いはず
①と⑤は皮膚と筋肉と血管しか無い場所です。
注入するスペースがないところに無理やり針やカニューレで押し込むのだから、そりゃあ直後からシコリになりますよ。
相当気をつけて打たないといけない場所です。
③④は入れすぎ注意。
⑦は論外。
以上、①〜⑦まで自分なりに部位別の印象をまとめてみました。
また何か発見があったらコラムやSNSで発信していきますのでよろしくお願いいたします。
こんな考察してると、散々やり尽くした表ハムラや裏ハムラでも応用できそうな新鮮なアイデアがまた生まれてきます。
ミッドフェイスリフトにも活用できそう。
普通にハムラしてたら気付かない、違う視点からのフィードバックが色々あります。
目の下ばっかりで飽きたな😅って時もありますけど、
案外、良い相乗効果があるものですね。
注入異物による顔のシコリは煩わしいものです。
どの場所だろうと結局手術じゃないと取れないし、ケナコルト注射(ほか、脂肪溶解注射にこっそりステロイド混ぜた謎のカクテル注射など)では一時的に萎むだけで解決策にはならないことが多いです。
しかし、決して摘出手術を気軽に推奨しているわけではなく、通常の美容外科手術と異なるとても難しい治療である事を十分にご理解ください。
シコリを取り除いた部位はボリュームが減ることで凹み変形が残る可能性は常にありますし、100%取り切れることをお約束できる手術でもありません。
他院での除去手術後取り残し修正で、組織損傷がひどく手をつけられないケースも見られるようになってきました。
決してお手軽に、都合良くは考えないで頂きたい手術です。
最後に、目の下注入異物除去手術の患者さんに術前に必ずお話している大事なこと。
”術後拘縮”の話をします。
異物のサイズや場所にもよりますが、除去した部位の空洞を埋めるため、
傷を治すために四方八方から硬く縮んできます。
これを術後拘縮と言います。
すると自由縁(ブラブラで力を受けやすい)である睫毛のラインが下に引っ張られ、一時的に軽めの外反が起こります。
アカンベーになるほどひどくひっくり返ることはありません。
繰り返しますがこれは一時的なものです。
術後2週間くらいのタイミングから始まり、そこから約1ヶ月程度で元に戻ることが多いです。もちろん個人差はあります。
外反の程度や持続期間については、異物のサイズや場所、癒着の程度、剥離範囲などによりますが、予測は困難です。
不安な時期ですがマッサージなどは絶対に避け、自然に戻るのをお待ち下さい。
触ったりいじったりする刺激で拘縮は悪化します。
経結膜切開の既往がある方は回復が遅い傾向にあるような気がします。
”外反”をご自身でネットやSNSで調べ、他院下眼瞼失敗例などを見て不要な不安に陥るのは避けてください。
ハムラなどで皮膚を切りすぎた、眼輪筋を損傷した、必要な靭帯を切ってしまった、などの手術失敗による病態とは根本的に異なるからです。
まずは1ヶ月検診まで落ち着いて経過をお待ち下さい。
脂肪注入後のシコリ除去の方。
直後で問題ないということは、皮膚の取りすぎなどは無いってことです。
1ヶ月で下まぶたが眼球から浮いて三白眼気味になってきました。想定内です。このあともう少し広がります。
術後3ヶ月でだいぶ戻ってきました。
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